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歯周病症例

初診

患 者:47歳 女性 

初診日:2004年2月13日 

主 訴:全顎的な歯牙動揺による咀嚼障害 

既往歴:アトピー性皮膚炎 

現病歴:40代中頃から、歯肉からの出血、腫脹、前歯の動揺を自覚する。

 十数年前から、かかりつけの歯科医に歯周病を指摘され、歯周治療を含む包括的な歯科治療を受診してきた。その後、毎月定期的に、歯科衛生士による超音波スケーリングを受けてきた。受診中何回か、前歯小臼歯部の抜歯の必要性を説明されるが、抜歯に抵抗があり見送ってきた。その都度、動揺を止めるため、T-Fixを希望しエナメルボンディングレジン固定を施してきた。最近、特に前歯部の動揺がひどく、主治医から、本格的な歯周病治療の必要性を説かれた。そこで歯周病専門医による治療を勧められ、本院を紹介された。

DENTAL

  重度広汎型歯周炎

治療計画

 Ptは、頬側歯肉のGIは低値であることなどから、過去に歯周治療を受けており、ブラッシングも習得していると考えられる。しかし、口蓋側や大臼歯部は、頬側付着歯肉の狭小などにより、歯ブラシが当該歯に当たりにくく、PCR、PlIスコアが高い傾向が見られる。そのため両側臼歯部に付着歯肉の獲得が必要である。また補綴物の不適合や、咬頭傾斜角・展開角の不良、咬合性外傷の排除、患歯を固定し安静に保つ、等の条件を直ちに満たすには、暫間被覆冠にて上顎全顎を固定する必要がある。 歯肉縁下カリエスの存在、重度骨吸収、歯内病変の存在は、歯牙の保存を左右することとなる。そのため、詳細な歯周組織検査と力学的、補綴学的、歯周処置の予後を考慮しながら総合的に歯牙の保存、もしくは抜歯を判断する。

1 歯周基本治療 動揺歯の固定を伴う暫間被覆冠装着、咬合性外傷の除去

2 歯周外科 歯周ポケットの除去 審美及び口腔内環境の再構築 

3 歯肉に調和した補綴物の装着

4 SPT ロングスパン補綴物の咬合、ポンティク部の管理

治療経過

1 歯周基本治療

 モチベーション 

 Ptは歯周病についての知識と治療について十分理解していたが、抜歯に対しては極端に嫌がっていた。かかりつけ医から、上顎は多くの歯を抜歯し、ほぼ総義歯となる可能性が高いという説明を受けている。しかし、義歯に対する心理的抵抗からT-Fixによる延命をしてきた。そのためブラッシングは、指導された通りに行っており、結果的にGI値が低く良好に保たれてきた。Ptは、小臼歯部まで、前装冠およびジャケット冠で捕綴されており、審美的要求度が強く感じられた。一方で、現状の口腔内に大変悲観しており。歯周病の重篤度がアトピー性皮膚炎との関連があるのではないかと、半ば歯周病の治療に落胆されていた。詳細な歯周組織、レントゲン診査により、上顎は固定性のブリッジで機能回復が可能であると判断した。Ptには、暫間被覆冠にて審美と機能の回復が可能である可能性を説明し、前向きな強い動機付けをした。これより、保存不可能な歯牙は、抜歯し、直後暫間被覆冠で審美と機能の回復を行うことで、抜歯の同意を得る十分なインフォームドコンセントを行った。Ptは、保存不可能な歯牙を無理に維持してくれたとして、かかりつけ医へ感謝の気持ちを示していた。

 ブラッシング指導 

 かかりつけ医でのTBIを尊重しつつ、より本格的なTBIを行う。1)口蓋側へのアプローチ  嘔吐反射を考慮しながら軽く口を開け、歯ブラシのかかと、つま先で、小刻みに振動を加えるように指導する。2)大臼歯部へのアプローチ 付着歯肉狭小部位のため、毛先が柔らかい歯ブラシを用いて粘膜への擦過を防ぐ、後にMGSを行うことに同意する。3)補助清掃器具の使用 前歯のブラックトライアングル部を用いて歯間ブラシの清掃効果を説明する。これを全顎に行うように指導する。4)エンドタフトブラシで最後方臼歯部のTBIを行う。

  抜歯 

 542 1 抜歯 根尖にまで及ぶ骨吸収のため、保存不可能と診断し抜歯する。 (2004,3~8)抜歯と同時に暫間補綴物を装着する。6- -6 暫間補綴物装着 強度と審美、顔貌との調和を保つため、口腔内に棒状U字型の即時重合型レジン塊を圧接し、削合して作製する。 

 スケーリング・ルートプレーニング

 単根歯へのアプローチは比較的容易であった。歯肉縁下歯石は、少ないが歯根面が粗造であるため。ルートプレーニングを必要とした。上顎は、暫間補綴物を除去して行うことにより、スケーラーの刃が歯根面により確実にアクセス可能であった。さらに、抜歯によって隣在歯が無くなり、スケーリングスペースが確保され、スケーリング・ルートプレーニングが容易となり、確実に根面処理を行うことができた。大臼歯部分岐部付近は複雑で注意を要した。7 抜歯 骨吸収は中等度であったが、近遠心口蓋根が蕾状に閉じ根形態が不良でスケーラーのアクセスが困難であった。また、Ⅱ度の分岐部病変があり予後に不安が残る為、6 への影響を考慮し戦略的抜歯をした。 

 

2 両側上顎大臼歯部 MGS、FOP(2004,9~2005,1)

3 補綴(2005,4~6)

4 SPT

 

暫間被覆冠にて上顎全顎の固定

 

歯周外科

1 上顎右側臼歯部 MGSFOP2004920051

 上顎右側臼歯部 受容床の形成 

 供給側 口蓋側歯肉上皮下結合組織の採取

 上顎右側臼歯部 上皮下結合組織移植

 術後 1M

 

2 上顎左側臼歯部 MGSFOP2004920051

 上顎左側 臼歯部MGS

 術後 1W

 

 術後 3M

 

最終補綴

補綴(200546

 

DENTAL

オルソパントモ